西加奈子『舞台』*ありのままに生きるということの難しさを考える

西加奈子さんの『舞台』。「誰もが皆、この世界という舞台で、それぞれの役割を演じている(後略)」という帯が印象的な一冊です。ありのままに生きるということの難しさを考えさせられるお話でした。

ネタバレを含む要素がありますので、読みたくない方は読まないよう、ご注意ください。

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西加奈子『舞台』

基本情報


発売日:2014年1月10日
著者:西加奈子
出版社:講談社
ページ数:194ページ

29歳の青年、葉太は、ニューヨークでの一人旅中に盗難に遭い無一文に。過剰な自意識、虚栄心と羞恥心から、周りに頼ることができず、マンハッタンを彷徨うことになってしまいます。

極端な描写にクスリと笑ってしまう一方で、あぁ、この感覚は少しだけ共感するものがあるなあと心を動かされる作品です。

過剰な自意識に苦しむ主人公

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過剰な自意識と承認欲求

常に人の目を気にして生きている葉太。29歳という年齢は私と同い年なのですが、正直言って、29歳でこれはイタイ。とってもイタイんですが、私にもどこか、覚えのある苦しみでした。

葉太の「生きているだけで恥ずかしい」と思うほどの極端な考え方は、行動にも表れます。ニューヨークでの一人旅初日、盗難に合ってしまったにも関わらず、「浮かれて初日に盗難に遭うなんてダサい」と思われるのが恥ずかしくて、誰にも頼ることができず、マンハッタンを彷徨い歩くことになります。

なにもそこまで考えすぎなくても…!と思うのですが、よく考えてみると、もし違う場面だったら「人からどう思われるかと考えるとが怖くてできない」ということは、自分にもあるなぁと考えさせられます。

行き過ぎた自意識過剰は、全部は共感できないけれど、自意識によってがんじがらめになる生きにくさは分かる気がしました。「人からよく思われたい」「笑われたくない」「排除されたくない」という思いは、生きていて誰もが一度は持ったことがあると思います。例えば、今の私であれば「デキる嫁だと思われたい」と夫の実家や知り合いの前で、背伸びをしてしまったりするのもそうかもしれませんw

他人からの目はすごく気になるということは、その反面、自分を承認してほしいという欲求だと思うし、若い人ほどそういった苦しみを抱えてるんじゃないかなと思います。

「ありのままに生きる」ことの難しさ

人は、多かれ少なかれ、人との関係性の中で生きています。それぞれの人生の中で「自分」を演じながら、生きていると思います。

そんな中で、自分を見失いそうになることって実は多いと思うんです。「本当の自分って何だろう」って苦しみながら、社会で生きている人たちは、この自意識というものに少なからず縛られていると思います。

「正解」の中に、いたいんだ。皆に笑われたくないから、引かれたくないから、排除されたくないから。そして、そういうことを延々と考え続け、社会から押し付けられてきた結果、俺たちには「ありのまま」なんて、なくなったのだ。

引用:西加奈子『舞台』p129

人の目ばかり気にしていると、どんどん生きにくくなるというのは、葉太の姿を読んでいても明らかです。作中で自分を太宰治『人間失格』の葉蔵と照らし合わせるのも印象的です。

ありのままに生きるって本当に難しい。

ですが、「ありのままに生きる」なんて、できない人の方が多いと私は思うし、「ありのまま」を意識すること自体がありのままの自分ではないんじゃないかな?と思うんです。

本当の「ありのまま」とは何か

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「ありのままに生きよう」「自分らしく生きよう」…言うのは簡単ですが、実態のないものです。誰かとの関係性の中で生きている以上、突き詰めていけば、どんなに意識しても自意識のない生き方なんてできるものではないと思います。

それならいっそ、自意識の苦しみから逃れるためには、人からどう思われても構わないと思えるような、自分がやりたい役割を堂々と演じればいいのではないかと私は思います。

誰かが何かを演じるとき、そこには自己を満足させること、防衛すること以上に、そうそれはほとんど「思いやり」としか言えないような、他者への配慮があるのではないだろうか。

引用:西加奈子『舞台』p178

この一節は、人が役割を演じているとき、それは、自分のためだけでない場合も多いことを教えてくれます。自分にとって大切な誰かのために「役割を演じる」ということは、決して悪いことではないと思います。

私は今、ある意味では「主婦」を演じているし、親の前ではいまだに「いい子」を演じていると思います。きっと、もし子どもができたら「いいママ」を、できなかったら「それでも楽しくやってる夫婦」を演じるはずです。

でも、それで自分を見失うことはないと思います。それは、その役割を演じたいと自らが思うからです。自分と関わりのあるあらゆる人に役割を演じることは、疲れてしまいますが、自分にとって大切なものに対して役割を演じることは、「生きがい」に変わることだってあると思うんです。

無理しない程度に、適度に役割を演じながら、自由気ままな生活ができれば、それが一番幸せなんじゃないかなと。それこそが「ありのままに生きること」なんじゃないのかなと思ったのでした。

まとめ

がんじがらめになっている主人公から、生きることの大変さを感じ、「ありのまま生きる」ということについて考えさせられたお話でした。

お話のラストで、葉太が異国の地で気付く境地は、疾走感があって読み応えがあります。このぐあーっていうラストがまた西加奈子さんらしくて好きです。

ぜひ、読んでみてくださいね☆

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